2020.05.01 林会長のお便り

 

心の豊かさ

 

 

 

 「思い千里を走る」聞きなれない言葉かと思います。遠方にいる人の安否を気遣(きづか)ったり(うわさ)をすると、本当なら通じることが無いのに相手に伝わったかのように、その人が現れたり電話がかかって来てビックリします。「思うだけ」でそのオーラが4,000km先にいる人にも伝わるという(ことわざ)が、諺だけでなく実際に経験した人も少なくないと思います。私は今、日本で起きていること、今までに経験したことのないような不自由なことを通して、この苦難の先には今まで以上の大きな力を得られるように思えて嬉しくなってしまいます。今までの生活が恵まれていることさえ分からないでいた自分が恥ずかしいです。幸いなことに私達はリスナーや協力者の皆様のお蔭で、ハローアルソン・フィリピン医療ボランティアを通して、スラムの人達の生活に触れることが出来ました。ここでは一日に一食どころか、二日に一食という人達ばかりです。それどころか「私の夢は15歳まで生きること」という女の子、20歳になるまで一度も歯医者にかかったことがないという人も(まれ)ではありません。それなのに、私達は食べられる食べ物でも美味くなければ平気で捨てています。「米一粒にこもる万人(ばんにん)の力」一粒のご飯を残してもられた経験がある人も少なくないのではないでしょうか。ところが、大量生産、大量消費が美徳とさえ思われる豊かな生活をするうちに、そんな大切なことさえ忘れてしまっていたことが恥ずかしいです。今回のコロナ騒動大変な時こそみんなで力を合わせて、この難局を乗り越えましょう。苦しいのはあなた一人ではありません。あなたの周りのほとんど全ての人が苦しいのです。今までの余りに恵まれた日々は、いつしかこういう大変な日が来ることさえ忘れさせてしまっていたのです。「未曾有の大被害」とは、こういうことなのです。2011年に起きた東日本大震災の時、みんなで感じたではありませんか。あれからたった9年しか経っていない中で、被害を直接受けなかった私達が、今度は全国一斉にあの時と同じ苦しみを味わっているのです。「311の被害を受けた皆様」が頑張って生きてくれているのに、9年も自由に生きられた私達がこの苦難を乗り越えられないわけがありません。元気に何不自由なく生きていた私達は、戦争や飢餓で苦しんでいる人達だって、私達と同じ苦しみの中にいることを考えましょう。昨年までの生活をしようとしても現在は絶対に出来ないのです。やりくりや工夫をして、自由を奪われた人達の苦しみのほんの僅かな分でも体験して、この人達への思いやりを忘れないようにしましょう。今日も患者さんが「歯科の先生や歯科衛生士さんが一番危険なんだそうですね。身体に気をつけて頑張ってください」と言って、アルコールを1缶(10ℓ)を届けてくれました。本当に涙が出るほど嬉しいです。一日一食か二日に一食しか食べられない中で、「私の夢は15歳まで生きること」と目をキラキラ輝かせて「幸せとは物の豊かさではなく、心の豊かさなのだ」と気付かせてくれたスラムの女の子の分まで、私達の頑張りでコロナ渦を乗り切って、ハローアルソン・フィリピン医療ボランティア2021に向かっていきましょう。

 

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