2020.05.29 林会長のお便り

 

 祐介先生・牟田さんこんばんは。

 

 全国の皆さんが「緊急事態宣言」からようやく解放されました。今回もそうでしたが、昨年の台風15号、19号の際にも避難宣言が出ても「我関せず」という人が事故に()大変なことになりました。古くは、311大震災の時にも、避難宣言が出ているにも関わらず、家に忘れ物を取りに行って津波にのまれ、尊い命を落とすことになったのです。避難をしたけれど何も無かったということがいいのです。何も無い時に行う避難訓練は、いざという時何も起こらないようにするための訓練で、空振りでも完璧にやる精神力が最も大切なのです。それなのに新型コロナに対しては対応が甘すぎると思います。

 

 私達ハローアルソン・フィリピン医療ボランティアは、フィリピンのスラムに行って無料の歯科治療を行っていますが、そこに向かう心得として徹底していることがあります。この現場は日本ではとても想像できるような場所ではありません。その上、法律が違う他国で、言葉が通じない上にスラムの人たちの人間性も全く分かりません。私達歯医者は言葉が通じなくても、患者さんが指をさせばその歯の状況を見て「抜きたいのか」、「治したいのか」一目(ひとめ)で分かります。しかし高校生は私達とは全く違います。その場で何をどうしたらいいのか、あまりにも気の毒すぎてスラムの人達に声をかけられても何もわからないでしょう。つまりどんなに心がけがよくても、何も分からない人にとっては大変なことでもつい手を出してしまいたくなります。そうなると本来やりたいことが出来なくなって、かえって足手まといになってしまいます。せっかく外国のスラムまで行って得るものは何もありません。だから日常生活が大切になるのです。日本で出来ないことがスラムにって出来るわけありません。私達は大変でも何でも出来る日本でしっかり訓練をすることにしています。基本は難しいことでなく誰でもできる事を繰り返しやることに尽きます。第一に声を掛けられたら大きな声で返事をする。第二は分からないときには勝手にやらないで必ず先生に聞き指示を待つ。第三はトイレに行くときも班長に大きな声で「誰々です。今からトイレに行ってきます」と声をかけ必ず二人以上で行動する。そして帰ってきたら直ぐに「誰々帰りました」と伝える。第四には自分の仕事が終わったら班長に報告し次の指示を仰ぐ。この声かけは「常に大きな声ではっきりと伝える」ことにしています。相手は誰かの声を待っているわけではなく、真剣に歯の治療をしていますから、多少声が大きくても分からないこともあります。何があっても分かるように「大きな声」をかけてもらいます。このように誰でもできる事ばかりですが、こういう誰もが出来ることをおろそかにするから事故が起きるのです。日本の災害の時も、避難指示が出たら安全が確認できるまで、その指示に従うのは当然のことです。素直になって、素直に聞いて、素直に実行することです。当然のことをしないから事故になるのです。

 

 さて皆さんは、今回の「緊急事態宣言」にしっかり応えられたでしょうか。出来たにしろ、出来なかったにしろそれが皆さんの「心根(こころね)」つまり癖なのですから次はしっかり対応できる人になりましょう。

 

2020529日 医学博士・歯科医師 林 春二