2021.05.14 林会長のお便り

 祐介先生・牟田さんこんばんは。

 “人の()見て(わが)()(なお)せ”という言葉があります。自分以外の人のやっていることを見て、自分の参考にしなさいと言うことです。特に地位の上の人とか知識人の処世術(しょせいじゅつ)ということではなく誰にでも当てはまります。人がやっていてよい所は素直に真似すればいいし、悪いことだったら真似するどころか、自分は同じ過ちを犯さないようにすることだと思います。

 最近テレビで見ていると、責任ある立場にいる人がこういう(ことわざ)とはかけ離れた言動をとり、ヒンシュクを買う場面が多発しています。まずは菅総理が「5人以上の会食をやめてください」と言いながら8人での会食をしてしまったことに始まり、厚労省の官僚の件はもっとひどいものでした。25人という大人数で、しかも夜中まで宴会をした上にコロナ感染者12人も出してしまったこと、コロナ対策で「37.5℃を4日間以上継続しないと発熱外来に行かないで」と当時の加藤厚労大臣が言いながら、それは皆さんの聞き違いだと言って謝罪すらしなかったこと、それ以外にも市町村の公職にある人達が次から次に人数制限を上回る会席。国民は政治家のステイホームや様々な規則を受け入れパンク寸前まで協力していたのです。政策を決定し執行する立場の人達が次から次へ繰り返す違反行為は国民のやる気を奪ってしまいました。第2回緊急事態でも最初の緊急事態宣言を上回る効果は得られませんでした。更に第3回目の緊急事態宣言に強い思いを込めたのかもしれませんが、その宣言を受け入れ守らなければならない国民は「何を今さら言っているのか」とタカをくくっているように思います。

 そして今回は日本医師会長の中川さんの件です。今まで医療に関わる団体の長として政治家に対してもハッキリと意見をしてくれました。コロナ禍で日々大変な思いで医療に当たっている先生方を代弁した発言に拍手喝采(かっさい)をした人は多かったと思います。権力者に対してもダメなものは駄目と言う発言は多くの国民の支持を得ていました。しかし今回は自民党国会議員自見(じみ)さんのパーティーを開催したのです。対策をしっかり取ればいいと言うのなら、一般の国民だって同じようにやりたい人も多いはずです。それを我慢しているのです。そして謝罪会見では、いつもの通りの弁明で・・・・。辞職するのではなく「会長職を全うすることが務めだ」と額に汗をビッショリかいていました。おそらく彼が今まで経験した中で、人前であれほどの汗をかいたことはないでしょう。もしも彼が今の地位に固執するのではなく、潔く退(しりぞ)く決断をしていたなら、あの汗はなかったと思います。「さすが日本医師会の会長は他の指導者とは違う」という賞賛の声が得られたのではないでしょうか。彼がこれから発表する場に出てくることはないと思いますが、出てきて何を言おうと、どんな立派なことを言ったとしても人々の耳に届くことはないでしょう。人は弱いものです。生きていくために自分を中心にしてしまいますが、他の人を中心にしていると言い方もやり方も違ってくると思いますよ。

2021514

 

医学博士・歯科医師 林 春二