2021.05.14 関口団長のお便り

祐介先生、牟田さんこんばんは

 先日、私は医療従事者優先枠で1回目の新型コロナウィルスのワクチン接種をさせていただきました。

日曜日の診療が終わり、会場に行くと、そこには20人程度の接種者と、多くの関係者の方々が誘導や身分証明書の確認などをされており、看護師や医師の方々が手際よくワクチン接種をされていました。会場は大きな体育館で換気もよく密などとは程遠い環境でした。私は受付でクーポン券を出し、身分証明書を提出しいくつかの問診を受けている時、係の人に尋ねました。「あなた達はどこの関係者ですか?」すると恐らくまだ

20代、30代くらいの若者たちが「私たちは市役所の者です。」と答えました。私は「あなた達はワクチン終わったの?」と尋ねると「いえいえ、まだです。」と答えます。

 私が彼らに「日曜日の休みにご苦労様です。私たちよりあなた達のような方々が優先されるべきなのに。」と言うと、彼らは笑顔で「ありがとうございます。しかし、まずは医療従事者の方々に頑張ってもらわないと。」と言いました。ほんの1分ほどのやり取りです。しかし少なからず私と彼らとの間に流れる空気は、殺伐としたコロナ禍の中、お互いを労わり合うとても優しい雰囲気だったに違いありません。

 私は改めて思いました。医療従事者や高齢者が優先されるからと言って、我先になるのではなく、それを支える沢山の人達のおかげだということを忘れてはいけませんね。だからこそ私たちも感染予防を徹底し、高齢者の方々も引き続き気をつけていただかなくてはなりません。そして一言、お互いの労をねぎらう気持ち、一緒に頑張ろうという思いがこれからの長いコロナとの戦に大切になると思います。

しかし、祐介先生はどう感じるでしょう。私はワクチン接種を終え、一人、車の中で色々と考えました。国が決めた優先順位とはいえ、電話回線はパンク、インターネットなど使えない高齢者が予約を取るために役場に並ぶ長蛇の列のニュースを見ると、なんとも言いようのない寂しさを感じます。もう少し血の通った仕組みを提言できなかったのか。

 オリンピックに関しては選手にワクチン接種を優先する案がでれば、それは不公平だという意見や、その不満を事もあろうに選手に向ける輩。私などは、私自身は十分感染予防に努めるので、私の分を高齢者やそれこそ日の丸を背負う選手達のために使っていただきたいぐらいなのですが・・・。私たちハロアルが支援しているフィリピンのスラムではワクチン接種など夢の話です。スラムでは時間制でのロックダウンが継続され、食べ物や飲み物さえ困窮する人たちは1週間に数回配られる集落からの配給に頼らざるを得ません。そのエリアに先日私たちのパートナーであるマニラチームが皆さんからいただいた物資や衛生キッドを200人分配布してくれました。住民の皆さんは本当に喜んでくれたそうです。世界にはもっと困っている人達が沢山います。私は有難くワクチンを打たせて頂きましたが、心の中にはいつも彼らの顔が浮かんでいます。

 

2021年5月14日 ハローアルソン・フィリピン医療を支える会 団長 関口敬人