2021.06.18 関口団長のお便り

祐介先生、牟田さん、そしてキョウヤさんこんばんは

 

いよいよ関東は梅雨入りを迎えましたね。ジメジメした天気はいささか鬱陶しいものですが、農家の方や自然界においても大切な恵みの雨ですから、私たちも体調を崩さず頑張らなければなりません。しかし最近はまるで南国のスコールのような局所的なゲリラ豪雨が多く、私の地元栃木県は全国でも有数の雷が発生する地域で、先日もせっかくのアユ釣りが雷の音が聞こえ始めた為中止となり、その数分後あっと言う間に大雨に見舞われました。

祐介先生、覚えていますか。以前、毎年2月に行われるハローアルソン・フィリピン医療ボランティアの現地活動のために訪れた事前調査での出来事を。

あの年、10月末にマニラに視察に行った時、数日前に大きな台風に見舞われ、スラムでは多くの家屋が被害にあっていましたね。そして私たちが訪れた時もスコールに見舞われました。私たちが大雨の中を車で移動をしていると、ふと、窓の外に二人の少女が見えました。年のころ8つ、5つの姉妹でしょうか。髪の毛は乱れ、服はボロボロに汚れたストリートチルドレンです。私たちが窓越しから彼女たちを見ていると、お姉さんでしょうか。彼女はおもむろに停車中の車のフロントガラスに駆け寄り、片手で車の窓を上から下へとかきながら、流れる雨水をペットボトルに集めています。そして、わずかに溜まったペットボトルの雨水を妹の顔や頭にかけ、洗い始めるのです。

私たちが現地リーダーに尋ねると彼は言いました。「雨どいからの水は汚れているから彼女たちのようなストリートチルドレンはああやって大雨になると体を洗っている。」

私たちは言葉を失いました。私はこの時期、いまでもふと、彼女たちの光景を思い出します。世界には雨水さえも生きるために必要とする子供たちが沢山います。私たちが毎日当たり前のように使うことができる水も、コロナ感染予防といって一日何度も手洗いする水も、フィリピンのスラムでは神様が降らす「雨水」に頼らなければならないのです。今、世界の危機と言われる新型コロナ感染も、ワクチンや医療の恩恵を受けることができるのは、偶然にもたった10%しかない世界の豊かな国に生まれた人間だけです。

私は連日報道されるオリンピックの喧騒を見ていると、どうしても素直にこの大会が

スポーツの平和の祭典と捉えることができません。

祐介先生、キョウヤさん、スポーツができる人間、ワクチンを摂取できる人間、雨水に傘をさすことができる人間・・・。私たち人間が自ら作ったこの不平等は、果たして

「運命」だけの問題なのでしょうか。

私たちが支援をしているフィリピンではこれから長い台風シーズンに入り、毎年多くの人達が被災されます。冠水、氾濫した河川から逃れるため、着の身着のままで避難します。どうか皆さん、ご自宅に眠っている支援物資をご協力ください。

 

2021618日 ハローアルソン・フィリピン医療を支える会 団長 関口敬人