2021.07.02 林会長のお便り

祐介先生・牟田さんこんばんは。

 前回、「これから100年頑張りましょう」と患者さんに声をかける話をしました。足を引きずってくる高齢者、腰が曲がって前が全くと言っていいほど見えないのではないかと思う高齢者、認知症が始まって今まで出来ていた会話が少し大変になり始めた高齢者、もともとそんなに耳は良くなかったけれど、最近特に耳が遠くなって会話に時間と工夫が必要になってきた高齢者の方々・・・・。どの高齢者も当院に通い始めて20年、いや30年にもなる人達ばかりです。当初、当院に来た頃は40代初めだったり50台だった人が70代に入り、後期高齢者の仲間に入っています。体の不自由な箇所が一つや二つあっても全くおかしくありません。その人達に「これから100年」と言うのですから笑っちゃいますよね。その人達に今までの人生、しっかり考えて一日一日生きてきた人などいません。これからもそういう人生を送ったとしたら、何かあった時「悔い」が残ると思います。ところが「これから100年・・・・」というと、今までの人生の送り方だけでなく、しっかり考え、無駄にならないように無理のない人生を考えると思います。何も考えないで深酒をしたり、夜更かしをしてもったいない時間を過ごす人と、「これから100年を目指して頑張るんだ」という人のことを考えたら一目瞭然です。だからと言って全ての人が100年を無事に過ごせるとは思いません。それでもこれから迎える一日一日を慎重にコツコツと歩むわけですから、「その日」がいつ来ても決して後悔しないのではないかと思います。それどころか、短くなった鉛筆を大切に使うように限りある自分の命を大切に大切にしていったら、本来ならなくなっていてもおかしくない命が、一日また一日と延びていくのだと思います。「そんなことはない。そんなことで寿命が延びるわけはない」と思う人は、それでも構いません。皆さんに与えられた命はどこかで尽きることになっています。その時は刻一刻と近づいてきますので、深酒をしようと夜更かしをしようと皆さんの自由です。好きなようにしてください。

 私達ハローアルソン・フィリピン医療ボランティアで結びついた皆さんとはここが違います。自分は信じられなくても、仲間がそう言っているのだから私達も素直にやってみようと思ってくれます。もっと大きな違いは「思うだけでも大変なのに素直にやってみる人が多い」のです。他の人を信じ、自分も他の人達に信じられる人になっていく活動がハローアルソン・フィリピン医療ボランティアです。ボロボロの家に住み、シャワーを浴びたことも無く、一日一食どころか二日に一食、三日に一食しか食せない人達ですから、歯ブラシを買うことなど出来るわけがありません。この人達の生きる力を呼び起こす、歯を守るために皆さんから提供してもらう歯ブラシ一本が、スラムの人の命を救うことになるのです。その人達のためにも一日も長く、健康で過ごして欲しいのです。「これから100年」生きるために、しっかり生活設計を立てて悔いのない人生を送ってもらうことが自分の「長生き」につながり、「他の人のため」になるのです。

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医学博士・歯科医師 林 春二