祐介先生、牟田さんこんばんは。
寒くなるに従って雪の多い北海道・東北・新潟から雪にまつわる事故をよく耳にします。交通事故は勿論のこと雪による倒木で電線事故、車の立往生、除雪中の事故その中でも悲しいのは屋根の雪おろし中の転落事故で毎年のように起きています。その度にとても心が痛みます。車の中で雪に埋もれて亡くなってしまうのは本当に気の毒です。こんなに豊かで便利になった国で起こる事故とは思えません。
前回も書きましたが、今の日本は明治の人の血を引いている私達にしては少し感情的になりはしないかという思いがします。フランスの外交家ポール・クローデルがこの地球に一つの民族を残すとしたら日本人だと言ってくれ、日本人は「ボロは着ていても心が錦だったのだ」と思います。それなのに今の日本は敵基地攻撃だのミサイルだの軍備増強のことばかり言っています。この力を借りる時は相手もダメージを受けるかもしれませんが、日本にとってもダメージがあります。今夜は日本が軍備を拡張することの不合理性を幾つか書いておきます。日本は軍備を拡張できません。その最大の理由は国際連合で決められているからです。これは第二次大戦で負けた日本、ドイツ、イタリアに果せられた「敵国条項」というものです。国連の常任国である、アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシアの5ヶ国全部が承認してくれたら日本の敵国条項ははずれるかもしれませんが、中国、ロシアは賛成してくれるでしょうか。否です。「日本が軍備を拡張して他国を攻撃しようとしたら、攻撃されようとした国だけでなく他の国でも国連の決議なしに日本を攻撃してかまわない」という内容なのです。ですから今政権が言っている敵基地攻撃能力を持つとか相手が日本を攻撃しようとしたらこちらが先に相手を攻撃してしまえなんて発想は国連的には通用しないのです。それでは日本はいつまでたっても自立できないじゃないかと思うかもしれませんが「そうなのです」。今だってアメリカは日本のどこに基地をつくろうと自由に作れます。しかもこの基地に関わる全ての人の裁判はアメリカの法律下に置かれて、日本の法律で取り締まることは出来ません。日米安保条約があって日本は軍治的に守られているから不満はないかもしれませんが、実際に米軍基地のあるところでは自動車の飲酒運転、それに共う事故、窃盗、殺人など、どんな事件でも日本の法律では裁けないのです。一番被害が多い沖縄の例を見るまでもないでしょう。これは日本の憲法の問題ではありません。国連と日米安保条約の問題ですからどうしようもありません。
日本の防衛力について語る人はこの問題を無視しすぎています。ですから日本がとれる唯一の安全保障は「外交」という武器に頼らない戦略しかないのです。それをあたかもミサイルを持てば安全だ、敵基地攻撃が出来れば相手がひるんで今より安全になるなどと思っているのは余程アンポンタンだということになります。
2022年12月23日
医学博士・歯科医師 林 春二