2024.04.12 林会長のお便り

祐介先生、牟田さんこんばんは。

 

 気候不順で遅れていた桜の開花もようやく始まり、全国各地から桜の便りが届いています。そこに円安でインバウンドによる海外からのお客さんがどこの観光地にも溢れています。

 外国人と言えば、先週の番組で祐介先生がポールクロデールの話をしました。ポールクロデールはフランス人の外交家です。明治時代のことですから、今のように文化的な生活様式ではなくて、むしろ貧相な生活だったと思います。しかし文化的にずっと進んでいるフランスに住んでいたポールクロデールに「もしもこの世に一つの民族を残すとしたら日本人だ」と言わせた明治の日本人は凄いと思います。こういう日本人になりたいですね。モンゴルからの留学生の話も出ました。その学生が「日本は素晴らしい」と言ってくれた感想は素直に感謝しましょう。ポールクロデールにしてもモンゴルからの留学生にしても素直に自分の気持ちを話してくれていると思うのです。そういう人達を裏切らないように今の日本をこれ以上大変な国にならないようにしましょう。それが心磨きです。

 私は歯医者に期待しているのは、治療のうまい歯医者、知識のしっかりした歯医者、やさしい歯医者、患者さんのためにいつでも対応してくれる歯医者であって欲しいというだけではありません。それらは全てプロとして当り前のことだと思うからです。実はもっと深い意味があります。

 ハローアルソン・フィリピン医療ボランティアを立ち上げる前に関口先生、祐介先生とデンマークのコペンハーゲンのホテルエクレルシオのロビーで歯科医療について語り合いました。新しい技術や治療法は講習会や研修会でいくらでも身につけられます。そこで患者さんが一番してもらいたくない治療は何だと思う?と聞いてみました。あまりにも突飛な質問だったので、すぐに答えは帰って来ませんでした。しばらくしたところで「歯を抜かれることだよ」と話しました。

 患者さんの口の中に抜けた歯があると私は「ここにあった歯はどうしたの?」と聞くと、決って「歯医者に抜かれちゃった」と言うのです。必ず「抜かれちゃった」という返事に、患者さんは歯の痛みや動揺を止めてもらいたいだけで歯を抜いて欲しくはなかったのだなと思いました。そういう患者さんの心の奥が判るような歯医者になってもらいたいのです。そういう「心」を磨いて欲しいと思っています。それにはボランティアほど「心磨き」にいいチャンスはないと思いました。それがハローアルソン・フィリピン医療ボランティア誕生の一つの目的です。

 そして設立から20年経ってみるとこの思いは正しかったと素直に評価できます。今の世の中で一番欠けていることはお互いに相手の事を思う優しさだと思います。皆さんは皆さんの立場で相手を思いやる優しさを更に究めてもらいたいと思います。

 2024412

 

医学博士・歯科医師  林 春