祐介先生、牟田さん、そしてリスナーの皆さんこんばんは。
久しぶりに朝の待合室に出てみました。私は患者さんと気楽に話せる待合室がとっても好きです。多少緊張しているとは思いますが患者さんが本音で話してくれるからです。もっと患者さんがリラックスしてくれるのは自宅ですから元気なうちに訪問診療出来るような制度にしていきたいです。10人ほど入れる待合室には診療室に入ってしまっていましたので、なじみの2人の患者さんだけでした。私と同世代の人ですから、多少体に問題が出ています。
話してみると1人は癌が見つかりこれからなんらかの処置が必要になるようです。 もう1人のほうは以前から足腰の痛みを訴えていましたから、「今日はどうですか」と声をかけました。タイミング悪いことに返事をしてもらう前に診療の順番が来て診療室に入って行くことになりました。スクっと立ったように見えても、私からすると健常者とは全く違っていました。歩き始めた時、グラッとしたように見えました。「あわてなくてもいいですよ。ゆっくり入って下さい。」と声をかけました。受付を見ると別の方を見ていましたので注意しました。「慌てなくてもいいですから、ゆっくり気をつけてお入り下さい」位の声はかけたほうが良いよ。少なくても呼ばれた患者さんがどんな動きかたをするのか見た方がいいのではないかと。どの患者さんもこの診療所を頼ってきてくれているのですから、入り口のドアが開いたら誰が来たのか目を向けてそれなりの言葉をかけるべきです。顔色はどうなのか?歩き方はどうなのか?そして何か変わったことは無いのか?気遣ってやる気持ちが大切ではないのかと話しました。
誰にとっても病院なんて嬉しいところではありません。来たくない代表格とも言えるでしょう。それがあたたかいやさしい言葉をかけられるのですからホッとするのではないでしょうか?そういうことがやさしさであり思いやりなのです。やさしさや思いやりは何か特別なことをしなければならないことじゃないのです。当たり前のことを当たり前のようにやれることがやさしさであり、思いやりだと思って下さい。
デンマークに行った時、夏代さんが「次に行く高齢者は以前行った高齢者ですから、何かお土産でも持っていきましょう」ということで花屋さんに行きました。花をプレゼントするのなら「花束」をと格好をつけたがる私は思っていました。ところが夏代さんはバラの花を1本だけ買うのです。お土産にたった一本の花。花束と思っていた私は驚きました。花を何本もまとめて買っても花です。たった一本でも花であることに違いありません。大切なのは届ける人の心がどれだけ入っているかということだと教えてもらいました。目から鱗でした。思いやりや優しさは最初の声掛けから始まるのではないでしょうか。
2025年9月5日
医学博士・歯科医師 林 春二